【新人看護師向け】アサーティブコミュニケーションについて説明します
こんにちは!「人に優しく、人を楽しませる」コミュニケーションが信条で、日本を、世界を癒しの力で包み込みたい看護師タレントユウジです。
このブログでは、病棟、高齢者介護施設、新型コロナウィルス軽症者宿泊施設、訪問看護ステーション、大学院生、教員、派遣など、様々な場所で看護を考えてきた看護師歴10年の僕だからこそいえる内容をブログ記事にして発信しています。
今回のテーマは、「【新人看護師向け】アサーティブコミュニケーションについて説明します」です。
動画解説
先日こんなツイートをしました。
相手の意見を尊重しつつ自分の意見を言うコミュニケーションを
アサーティブ(WIN-WIN)コミュニケーションと呼ぶ。でも
立場上の人:意見を通す方が楽
立場下の人:従っていた方が楽
だから中々浸透しない。患者に最善のケアをしたいなら話し合いは必須
— 看護師タレントユウジ(テアトルアカデミー大阪) (@nursetalentyuji) November 19, 2020
アサーティブコミュニケーションは、相手の意見を尊重しつつ、自分の意見を伝えるという現代社会にとって大事なコミュニケーション技法です。WIN-WINコミュニケーションと同じ意味でここでは考えます。
現代社会にとって大事というのは、個人個人の価値観を尊重しながら仕事をするからです。
これ、考え方自体は素晴らしいのですが、看護の現場では実はあまり実践されていません。
意見が言えない悩みの理解
看護の現場で先輩に自分の意見を言う事は、普通にハードルが高いです。
僕もそうでした。自分の意見を言えないし(言える雰囲気かわからない)、自分の意見を言ったとしてもスルーされてしまう。
新人看護師は逆インフルエンンサーなわけです。
でもアサーティブコミュニケーションを上手く実践できると、職場に馴染めるのが加速したり、評価があがって仕事をしやすくなります。
あくまで上手く実践できることが大事です。
上手くというのは、相手の意見を聞くことを忘れないことです。
アサーティブコミュニケーションは、先輩や後輩、上司と部下など、立場の違いを越えてポジティブに意見を言っていくための、問題解決にフォーカスしたビジネス上で重要なコミュニケーション技法です。
プライベートでも考え方としてはよいと思いますが、ここでは特にビジネス、看護の現場で、あなたが先輩看護師に意見を言えない状態から、少し意見を言える状態になるよう、新人看護師に実践してもらいたい内容にしぼってお話します。
今回の目次は、こんな感じです
- アサーティブコミュニケーションとは
①立場の違いに関わらず、相手と自分の意見を対等に扱う
②自分と相手のどちらも尊重する思考 - アサーティブコミュニケーションが看護師の現場で浸透していない理由
①時間がない
②立場が上の人の意見に従っていた方が責任がなくて一見楽
③立場が下の人の意見を立場が上の人が意見を聞くかどうかは立場が上の人次第 - 新人看護師がアサーティブコミュニケーションを実践するときのアクションプラン
①基本的には自分の意見を伝えて、相手の意見を聞くことで意思決定に脳みそを2つ使う
②アサーティブコミュニケーションが通じない人とは距離を置く
③意見が対立するときはいったん受け止め、聞いているという意思表示をして総合的に意思決定する - まとめ
それでは説明していきます。
アサーティブコミュニケーションとは
立場の違いに関わらず、相手と自分の意見を対等に扱う
アサーティブコミュニケーションは、
立場が上の人が立場が下の人に意見をいうとき
立場が下の人が立場が上の人に意見をいうとき
このときに重要な技法です。
これは簡単に言うと、新人看護師や2、3年目看護師(立場が下の看護師)が、先輩や病棟師長(立場が上の看護師)に意見を言っていくために重要なコミュニケーション技法であり、先輩や病棟師長(立場が上の看護師)が、新人看護師や2、3年目看護師(立場が下の看護師)に対して意見を言うために重要な技法です。
そして、立場が上同士、下同士であっても、ギャップは少ないですが、立場がたとえ同じであっても、相手の意見をと自分の意見は対等ですよ、という考え方です。
ここで立場が違うときに重要と言ったのは、立場が同じなら、意見の言いやすさが生まれやすく、立場が違うなら、特に相手の立場が上であれば意見の言いづらさが生まれやすいです。さらに、意見の内容ではなく、意見を言った人の立場の強さ弱さがその後の意思決定につながっていきます。
でも、立場が上だからって間違えることはあるし、下だからっていつも間違った意見を言うわけではないですよね。
自分と相手のどちらも尊重する思考
アサーティブコミュニケーションは、自分と相手、相手と自分、どちらも尊重します。これは、相手の意見を聞くことと、自分の意見を伝えることをどちらも行うということです。これはコミュニケーションの基本なのですが、看護の職場に浸透しているといえるかどうかは疑問です。
なぜなら立場が下の人が意見を言うとき、意見を聞くかどうか、尊重するかどうかは立場が上の人次第になってしまうからです。
アサーティブコミュニケーションが看護師の現場で浸透していない理由
メリットが多いのですが、アサーティブコミュニケーションは看護の現場に浸透していません。なぜなら、これは立場が上の人にとってメリットが少ないからです。つまり、立場が上の人が下の人の意見を聞くときには重要な考え方で、逆は年功序列なので当たり前ということです。先ほどお伝えしましたね。
時間がない
看護師は主観的・客観的にも時間がない職業なので、どうしても相手の意見を聞く余裕がありません。ここで大事なのは、意見を言ってくれたことに対して感謝をすることです。時間がないからといって、話を聞かないのは患者ケアを優先しすぎてチームワークを無視することになり、結局は患者ケアが行き届かないことになります。後からでもいいので、「さっきは意見を言ってくれてありがとうございます」と感謝を伝えましょう。
倫理など、答えが出ない課題・問題に対して答えを早く出そうとする
時間がないの延長ですが、看護師の話し合う内容は、
- 倫理
- 人権
- 患者の心理
- 患者の意思決定
- 家族の関係の問題
すぐに答えを出せない内容があります。
このような患者の人間関係に関わる内容については、看護師個人個人の価値観から得た情報とアセスメントを1つ1つ検討して、病棟看護師としての対応を決めていくことが最善であることは誰でもわかると思います。でも、時間に制約があると、これが出来なくなります。
「○○決まったからやって」ということになります。
考えた結果決まったことをやることと、考えてなくて決まったことをただやるのでは、前者の方が理解をして行動することになります。前者と後者、患者の立場ならどっちの看護師に担当してほしいかという話ですね。僕は前者の看護師に担当してもらいたいです。
立場が上の人の意見に従っていた方が責任がなくて一見楽
これがいちばん楽じゃないんです。その場しのぎで楽なだけで、立場が上の人の増長と、立場が下の人の思考停止を招いて、より不自由な職場になります。
僕が病棟勤務をしていた頃の主任は、病棟看護師の指導に厳しい面がある人で、患者にとって最善なことを常に考えていました。病棟看護師に対してもすべてではないですが厳しい一面があり、主任が勤務しているときと勤務していないときの病棟看護師の表情や発言が異なるくらいでした。
主任の前では緊張して意見を言えない看護師が多かったです。主任がいないカンファレンスでは看護師が発言するのに、いるときには看護師は発言しない。なぜそうなるのかをずっと考えていました。
小学生かよ、とも思っていました。僕は主任を真実を見極めるラーの鏡のように扱っていたので、どっちかというと主任がいるときは積極的に、いないときは自制するために保守的に仕事をしていました。なので、主任がいるカンファレンスは僕と主任だけがしゃべって他の看護師が了承をするという構図です。(僕がいなくて主任がいるときは、当たり前ですがよくわからないです)
で、出した一つの結論が、意見を覆せないから従っていた方が楽、です。これは残念ですがわがままよりの発想です。主任は厳しいけど患者にとっての最善のケアを考えていたので、病棟看護師も同様に考えて意見を言えば、アサーティブになります。で、こっちの方が主任に認められます。でも、そうじゃないから認められないし、意見を言わないから聞いてもらえない。アサーティブになれない理由はこれです。意見を言わない方が自分がいま楽、です。
立場が下の人の意見を立場が上の人が意見を聞くかどうかは立場が上の人次第
自分より立場が上の人が下の人に意見を言うことは、指示命令系統の道筋なので、難易度は低く、普通です。
でも、自分よりも、
- 経験年数が多い人
- 年上の人
- 職位が高い人
これらの人に意見を言うことは、難易度が高いです。その理由は、
- 指示命令系統が逆順である
- 立場が上の人がわがままだと、立場が下の人の意見を聞かない
これらです。
人間は基本的に防衛本能があり、個人個人をみるとわがままです。なので、大人になっただけでは生物のわがままな本能には打ち勝てないです。
そうではなく、集団で成長したいと思っている人、村を守るぞ、という思考がある人、みんなで生き残るという目標や信念を持っている人なら、立場が低い人の意見も聞いて、みんなの合意(コンセンサス)を得ることで、よりチームワークを高めて物事に取り組もうとします。
つまり、チームワークで”みんなが働きやすい病棟にしよう”、”ストレスの少ない職場にしよう”というリーダーや上司であれば、当然立場が下の新人看護師や看護助手の方の意見も聞きます。このようなチームワーク思考がアサーティブコミュニケーションです。
だけど、”自分さえよければいい”というリーダーや上司であれば、集団をよくしていこうという考えが働かないので、リーダーや上司が気持ちの良い、トップダウン思考(私がリーダーなんだからあれをやりなさいという思考)であったり、自分に甘く他人に厳しいようなスタンスになります。このような人が上司・リーダーであれば、意見を聞いてくれないので、アサーティブコミュニケーションは成立しません。
じゃあどうすればいいのか?新人看護師だとアサーティブコミュニケーションできないの?と思われると思います。次に説明します。
新人看護師がアサーティブコミュニケーションを実践するときのアクションプラン
アサーティブコミュニケーションを上手く実践できると、職場に馴染めるのが加速したり、評価があがって仕事をしやすくなります。
簡単に言うと、アサーティブコミュニケーションのメリット(自分の意見、相手の意見を尊重する)を活かし、デメリット(意見を聞いてもらえない・時間がない)をコントロールすればいいわけです。
基本的には自分の意見を伝えて、相手の意見を聞くことで意思決定に脳みそを2つ使う
「私はこう思います、あなたはどう思いますか?」と意見を聞く習慣をつけることが大事です。
細かい手順でもいいし、実践したことがないケア、実践するのが不安なケアでも、内容は看護に関わるものならなんでもいいです。意見を伝えることが大事なので、さほど難易度は高くないです。意見をちゃんと言う人なんだと認知してもらうことが大事です。
- 「患者Aさんの採血が以前できなかったので不安です、血管を一緒に見てもらえますか」
- 「患者Bさんの血圧が80台で少し低めなので、ベッドの足側を挙げようと思うのですが、他にやれることはありますか」
- 「これから患者Cさんの胃カメラがあります、ちょっと時間早いですが、いま報告しても大丈夫ですか」
という感じです。
わたしは○○です、患者さんは○○です、と伝えると、「で?」と返されて凹むパターンがあるので、そうではなく、自分の意見や考えを伝えて、相手のリアクションを聞く、つまり意見を言ってもらうことが大事です。
これで脳みそを2つ使うことになり、スキルアップにつながります。これはアサーティブだけではなく、報告や依頼のしかたでも大事です。
これでも感情的に、あるいは否定的に返されることもあります。そういうときは、自分が悪いことを言った、と思わずに、「この人にはそのように見える」と思うだけにしましょう。
繰り返し行っていると慣れていき、「きちんと質問をする人」という評価になり、依頼や質問のハードルが下がります。
申し送りについてまとめた記事がこちらです。
【申し送りができない】から【できる】へ~新人看護師・復職看護師向け~
新人看護師や、異動をしたばかりの看護師、復職看護師にとって、申し送りは難易度が高いです。ツッコまれたりすると、萎えたり精神的負担がかかるし、次に申し送りをするときに気が重くなる経験をされた方も多いと思います。僕もそうでした。申し送りのコツは、理由をもって依頼する、納得できる内容になるように整理することです。
【申し送りが苦手】な看護師の方へ追い風を!ツッコまれたときの返し方の研究
新人看護師や、異動をしたばかりの看護師、中途採用でまだその職場に慣れていない看護師にとって、申し送りはちょっと難易度が高いですよね。僕の看護師経験では、ツッコまれなくすることは不可能です。でも、ツッコまれたときに、どういうリアクションができるかで、その場の空気と評価、自分の精神衛生はガラリと変わります。
アサーティブコミュニケーションが通じない人とは距離を置く
- 明らかに自分矢印の回答をされる
- ワガママ回答をされる
- 納得できる理由がなく回答がない
こんな感じで自分自身が相手の意見と自分の意見を尊重していたとしても、相手が相手自身の意見を尊重していてあなたの意見を尊重しない場合は、アサーティブコミュニケーションが成立しません。
このような場合は、あなたが相手を尊重した分だけ損した気分になりますので、相手が自分の意見や話を聞く気があるかどうかを見極めるのが大事です。
このような人だと認定した場合、相互尊重できずにわがままを言われる可能性が高いので、話し合いができない相手だと思いましょう。距離を置くのがベストです。
どうしても関わらなきゃいけない場合は、「はい、いいえ」で答えてもらう簡単でこっちのダメージが少ない意見にするとか、他の人をまぜて話し合いをするようにしましょう。
意見が対立するときはいったん受け止め、聞いているという意思表示をして総合的に意思決定する
意見が対立するときはどうしようか
と思われると思います。
アサーティブコミュニケーションで大事なのは、意見を聞くことであって、意見に従うことではありません。
意見を出してくれた人に対して、「あなたはこんなことを考えていたんですね!」と受け入れる、受け止めること、そして意見を出してくれたことに感謝をすることが大事です。
意思決定に反映されていなくても、次回もまた意見を言ってくれるよう配慮することが大事ということです。
立場が上の人が下の人の意見を聞くことが前提と思われるかもしれませんが、立場が下の人が上の人の意見を聞くときでも同じです。相談内容を、すぐに答えが出ること=手順やルール、すぐに答えが出ないこと=倫理や患者の心理など、問題を整理することが大事です。
患者に対して最善のケアをする
看護師にとって働きやすい職場にする
これの目的のためであれば、先輩看護師はたとえ先輩の意見に従わなくても、「意見を聞いてくれなかった」とは言わないし、思いません。
「今回は、私は〇〇だと思って、先輩との意見の違いに折り合いをつけるのが難しかったのですが、私は責任を持って、△△のようにしていきたいと思います。教えてくれてありがとうございました」と言ってしまいましょう。
責任なんて持ちたくないよ、と思われるかもしれませんが、大丈夫です、看護師として患者を受け持っている段階で、すでに責任を持っています。言葉の力は不思議なもので、責任を持って、と言ってしまうと、責任を持った行動ができるようになります。
責任はすでに持っていて、「責任を持った行動をします」と言える人と、責任はすでに持っているのに、責任は逃れたいと思っていて腰が引けて逃げる人、どちらが評価されると思いますか。どちらに看護してもらいたいですか。
もう絶対責任を持った行動をしますと言える人ですよね。新人看護師なりの責任、2年目看護師なりの責任、看護学生なりの責任でもちろん大丈夫なので、ちょっと考えてみましょう。
責任責任ウザがられそうですが、大事なのでおぼえておいてほしいです。
まとめ
アサーティブコミュニケーションについて説明しました。
アサーティブコミュニケーションは、立場の違いに関わらず、相手の意見を尊重しつつ、自分の意見を伝えるコミュニケーション
アサーティブコミュニケーションは、立場が違うと意見を言いづらい、聞きづらい傾向があるが、誰が言っても意見は対等であるということと、意見を言う人を尊重しているコミュニケーションである。
アサーティブコミュニケーションは、看護の現場ではなかなか浸透していない
アサーティブコミュニケーションは、看護の職場の特徴である時間がないということ、立場の違いと人間の防衛本能であるわがままさが成立を妨げることがあり、成立できる相手かどうかを見極めることが大事です。
新人看護師がアサーティブコミュニケーションを実践するためのアクションプラン
「私はこう思います、あなたはどう思いますか?」と意見を聞く習慣をつけ、よく意見を言う人、仕事をおぼえようと頑張っている人という評価を受けることが大事です。
これらについて説明してきました。
新人看護師は、病院が決めたステップの中で自主的に勉強をしたり、行動をすることが求められ、窮屈に感じることが多いです。受け身と言われないように、自分から意見を言って、意見を言ってもらうというアサーティブコミュニケーションをぜひぜひ実践してみてください。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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