【医療安全の事例】SBARを用いた看護師向けインシデントレポートの書き方

新人看護師 看護学生 看護師

こんにちは!「人に優しく、人を楽しませる」コミュニケーションが信条で、日本を、世界を癒しの力で包み込みたい看護師タレントユウジです。

このブログでは、病棟、高齢者介護施設、新型コロナウィルス軽症者宿泊施設、訪問看護ステーション、大学院生、教員、派遣など、様々な場所で看護を考えてきた看護師歴10年の僕だからこそいえる内容をブログ記事にして発信しています。

今回のテーマは、【医療安全の事例】SBARを用いた看護師向けインシデントレポートの書き方です。

先日こんなツイートをしました。

医療・看護の現場では、24時間の患者の生活が成り立つように、看護師が介入していく必要があります。そのため、看護師は1人では看護が成り立たず、交代で患者を看ていくことになります。そのときに必要なことが、申し送りであったり報告です。しかし、これが難しい。

悩みの理解

悩む看護師「なんとか患者を受け持っているけど、リーダーにうまく伝えることができない。特に、急変だったり転倒だったり、インシデントレポートを書くのは、テンションが下がるし、うまく整理することができない。時間も短くしたい。どこかにうまい方法は落ちてないかな、、、」

看護記録の記載や、申し送りとか報告、それから報告書の記入って、困難感を感じていませんか?
僕もそうでした。新人看護師の頃は、申し送りは緊張するし、記録はツッコまれるし、単刀直入に嫌でした。
そもそも学生の頃から報告や記録を書くことにツッコまれるし、トラウマもありました。

でも、報告のしかたや看護記録の書き方は、ちゃんとした正解があります。
それのヒントになるのが、SBAR(エスバー)です。
これは、5W1Hに近いです。そもそも、5W1Hで記録を書きましょうと教えてくれる看護学校や病院は、かなり少ないと思います。
今回はこのSBARを用いた看護記録の書き方について、深堀して説明をしていきたいと思います。

インシデントレポートで何を書いたらいいかわからない人、書く時間を減らしたい人は必見です。

今回の目次は、こんな感じです

  1. SBARとは:医療安全の事例のレポートに適したスマートなツール
     ①医療安全の事例の報告に適したSBARを知ろう!報告書をなぜ書けないか?
     ②医療安全の事例の報告に適したSBARは、書き方にも良いスマートなツール
  2. 医療安全の事例を、SBARを用いたレポートの看護師向けの書き方
     ①【看護師向けSBARを使った医療安全事例の整理】の前に読み手を意識する
     ②【看護師向けSBARを使った医療安全事例の整理のコツ】事実と解釈を分割
  3. 【看護師向けSBARを使った医療安全事例の整理】書き方の実際
     ①【看護師向けSBARを使った医療安全事例の整理】患者紹介
     ②【看護師向けSBARを使った医療安全事例の整理】レポート記載内容
     ③【看護師向けSBARを使った医療安全事例の整理】SBARはどれか?
  4. まとめ

それでは、説明していきます。

SBARとは:医療安全の事例に適した看護記録や報告書の書き方でスマートなツール

医療安全の事例に適した看護記録や報告書の書き方でスマートなツール
SBAR(エスバー)は、アメリカ発祥の報告様式で、医師に緊急の報告をするときに便利な報告様式ですが、インシデントレポートの書き方でもスマートに使えます。スマート、つまり、無駄がなく、必要なことだけに特化したツールです。

    SBARとは

  • S(Situation):患者を取り巻く状況や患者の状態
  • B(Background):患者背景(病名、入院目的、基礎疾患、治療、経過など)
  • A(Assessment):評価、解釈、判断
  • R(Recommendation※):依頼内容、※リクエスト(Request)としてもOK

これに合った情報、解釈、依頼内容であればOKです。

医療安全の事例の報告に適したSBARを知ろう!報告書をなぜ書けないか?

看護学生時代から、レポートや報告自体が苦手な人が多いです。僕もそうでした。報告内容は口頭でも文章でも、抽象的で、感想みたいな内容が多かったです。この答えはたくさんあると思いますが、1つの正解は、「読んでもらうことへの意識」です。
看護学生の記録は学び主体なので書いた本人のためになる内容です。その一方で、看護記録やインシデントレポートは、読んだ人に情報、詳細、内容などが伝わることが目的です。
この学生の記録と看護の職場の看護記録の違いについてを、看護学生→看護師として働くという変化の段階で、誰も教えてくれないし、本人が意識することもできない。さらに、看護学生時代での看護記録の書き方を、5W1Hで書こうとさえも、なかなか教えてくれる学校は少ないし、どこにも書いていないから学生自身もわからない、わからないまま卒業する、ということです。
簡単に言うと、初めて人のために文章を書くから、看護記録や報告書をうまく書けないということです。
これは、新人看護師だけではなく、3~5年目看護師でもありえます。書いた文章を見ると、その人の考えていることがわかるものです。
この文章を書けない→書けるにするヒントをくれるツールがSBAR(エスバー)です。

医療安全の事例の報告に適したSBARは、書き方にも良いスマートなツール

SBARは、文字通りS・B・A・Rの4つの基本構成であり、無駄をなくしたスマートなツールです。
まず、S(Situation)が一番最初に来ている、つまり患者の状況・状態を、一番最初に記載したり述べたりすることになるので、SBARを用いると最初に一番大事なことを述べることになります。
次に、R(Recommendation、Request)が大事です。口頭であれば、報告相手に何を依頼するか、ということが大事です。報告書や看護記録の記載では、そのとき誰に何を依頼したか、ということです。これは、アサーティブコミュニケーションのときにも述べましたが、責任を持って○○するという内容です。依頼をしたが相手が行動してくれなかった、依頼をしてなくて相手は行動しなかった、全然違います。S・B・Aだけでは、相手に何をしてもらいたいかは、具体的ではありません。(ここがアメリカっぽいところです)日本ではニュアンスで伝わりますが、はっきりと依頼を伝えるのが大事です。日本人はニュアンス、空気、忖度など言語化しないことを美徳とする国民性ですが、それが原因で、S・B・Aだけで依頼内容が伝わる人と伝わらない人がいます。なので、はっきりと依頼内容を伝えるのが大事です。
A(Assessment)は、依頼内容の根拠になります。直感的に「ヤバそう」「マズそう」も解釈ですが、「ヤバそうだから○○してくれませんか」では伝わらないことが多いでしょう。でも直感は大事です。なんでそう思うか・思ったかを少し深堀しましょう。
B(Background)は、患者の基礎情報です。これは、S・A・Rの内容とは比較にならない量の情報があり、内容によって報告の優先順位が変わるので取り扱いはちょっと厄介です。ただ、それでも過去情報なので、S・Rよりは優先順位は高くならないので、要約が大事です。マズローなどを活用して生命や生活に影響する内容をピックアップするのがよいです。

看護師向けの医療安全の事例を、SBARで整理したインシデントレポートの書き方

看護師向けの医療安全の事例を、SBARで整理したインシデントレポートの書き方
本当はインシデントレポートなんて書きたくないですが、転倒や誤薬は発見者になることもあります。
そのときに、

内容を適切に書き、不要な内容を省く

さらに時短で書く

ことを目指します。

【看護師向けSBARを使った医療安全事例の整理】の前に読み手を意識する

まず、レポートの書き方の前に、読み手を意識します。インシデントレポートの読み手は、誰でしょうか。病棟師長、病棟看護師、他は、病院の安全管理系の看護師長、安全管理系の他の職種も目を通すはずです。そうなると、SBARのうち、Bの要約も含めて、その患者さんを知らない人にもわかるように、書く必要があります。
なお、インシデントレポートの場合は、カルテではないので、開示請求はありません。

【看護師向けSBARを使った医療安全事例の整理のコツ】事実と解釈を分割

インシデントレポートの書式が多岐にわたると思うので、僕の病院での形式を参考にします。
まず、日付看護師の名前病棟患者ID主病名基礎疾患などは、難なく書けると思います。
また、インシデントレベルですが、間違いがあったが検査の必要なし、検査や治療の必要ありなど、選択していくものについても、難なくできると思います。
問題は、文章のところです。僕の病院の様式は、発見までの経緯実際の対応今後の対応策の3つに分けられていました。
発見までの経緯には、S(発見時の状況)とB(Backgroundの要約)を書きます。実際の対応は、S(発見後の状態)とR(他者への依頼内容とその結果)を書きます。今後の対応策は、A(解釈、判断)を書きます。
インシデントレポートは、事実と解釈を分けて書くことが大事です。事実は事実でゆるぎないことをちゃんと書く、解釈は、判断や、考えた内容、意見を事実とごっちゃにせずにちゃんと書く。事実は事実、解釈は解釈と混同せずに記載することが大事です。つまり、患者が転倒した、というのは転倒したことを見ていない限り、書いてはいけません。患者が床に座っていた、話を聞くと「転んだ」と言った。このように、事実を並べて書きます。
最後にもう1つのコツです。それは、インシデントレポートを書くときは、看護記録をコピペしよう、ということです。インシデントレポートと看護記録は、ほとんど同じことを書きます。そして、先に書くのは看護記録です。その理由は、患者ケアにあたる人と情報を共有することが優先で、安全管理系の人に報告するのは後でいいからです。そして、看護記録に書いた内容に、B(Backgroundの要約)を追記して、インシデントレポートを書きます。看護記録とインシデントレポートはそもそも同じ内容である必要があるし、レポートを書くことの時短がコピペすることで、可能です。

【看護師向けSBARを使った医療安全事例の整理】書き方の実際

【看護師向けSBARを使った医療安全事例の整理】書き方の実際
それでは、実際に医療安全の事例を用いて、SBARを使ったインシデントレポートの書き方を紹介します。

【看護師向けSBARを使った医療安全事例の整理】患者紹介

患者紹介です。
70歳代の女性患者Aさん。大腿骨頸部骨折で、観血的整復固定術の手術後で7日後経過し、入院中。既往歴に高血圧と不眠症あり、降圧剤と眠剤内服中。車椅子移乗見守りの状況で、ナースコールを押して日中夜ともにトイレに行っていた。
夜2時に、ドスンという音がしたので訪室すると、床に尻もちをついており、転倒した様子。「すみません、トイレに行きたくて」「転びました」と言う。私がナースコールを押してB看護師とともに車いすに乗せる。血圧測定し、著変なし。下肢の痛みの訴えが強くなかったので、看護師2人介助でトイレに行き、排尿あり。ベッドに戻る。
当直C医師に連絡し、診察依頼する。医師の診察で、頭部外傷も骨折もなさそうだが、朝に念のためレントゲンの指示あり。Aさんには安全のためにベッド柵をさせてもらうよう説明し、さらにトイレに行くときはナースコールを押してもらうよう説明する、了承を得る。

【看護師向けSBARを使った医療安全事例の整理】レポート記載内容

ここからが、インシデントレポートの記載内容です。

発見までの経緯

大腿骨頸部骨折で、観血的整復固定術の手術後で7日後経過し、入院中の70歳代女性患者Aさん。既往歴に高血圧と不眠症あり、降圧剤と眠剤内服している。ADLは車椅子移乗見守りレベル。日中夜ともにナースコールを押せており、日中夜端坐位自立していた。12月14日の夜2時5分、ドスンという物音で訪室すると、Aさんが床に座り込んでおり、転倒したかを聞くと、「そうです」と答える。「すみません、トイレに行きたくて」と話す。

実際の対応

B看護師を呼び、2人介助で車いす移乗し、下肢疼痛なし。血圧測定し、著変なし。看護師2人介助でトイレに行き、排尿あり。大腿部に腫脹・発赤なし。ベッドに2人介助で移乗し、当直C医師に診察依頼する。診察結果は、頭部外傷なし、骨折なし。朝にレントゲンの指示あり。夜間にトイレに行く際は、臥床したままナースコールを押してもらうこととし、ベッド柵をさせてもらうことを了承得た。

今後の対応策

  • 眠剤を内服している患者は、夜間の起き上がり状況やナースコールの状況を確認してから夜間端坐位自立にする
  • 寝る前に、トイレに行くときはナースコールを押すように声をかける
  • 患者と約束し、夜間のトイレ誘導を行う

対応策は3つあれば問題ないです。

【看護師向けSBARを使った医療安全事例の整理】書き方の解説

こんな感じです。
発見までの経緯は、Sはもちろんすべて記載します。さらに、B(Backgroundの要約)を追記して、患者の基礎情報を補足説明し、安全管理系の人が電子カルテで情報収集をしなくてもよいようにしています。
実際の対応は、SBAR看護記録版のコピペであり、事実を記載します。ここに、発見後のSとR(依頼内容)を追記します。今後の対応策は、レポート作成時のAです。その場で考えられる対応策を3つ挙げておけば、問題ありません。対応策が難しいかもしれませんが、同様のケースでどうすれば防げたかを考えて、看護師の行動レベルで対策を検討すればOKです。

まとめ

【医療安全の事例】SBARを用いた看護師向けインシデントレポートの書き方
インシデントに関わると、テンションがだだ下がりしますが、インシデントレポートは、もともとの考え方は、前向きに対策を考えていく材料にすることです。
ここでお伝えしたいのは、特に、事実と解釈を必ず分けることです。
なんとなく事実と解釈をごっちゃにしてしまいがちなのですが、分けて整理することが、インシデントレポートの記載のコツです。そして、特にS(Situation)をちゃんと見て、Rの対応をきちんとできるようになりましょう。看護師の強みは1人ではないことなので、1人だけで背負うのではなく、仲間と相談しながら乗り越えていきましょう。
SBARを使ってぜひ整理してみてください。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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