SBARを用いた看護記録の書き方【読み手にとってわかりやすい】
こんにちは!「人に優しく、人を楽しませる」コミュニケーションが信条で、日本を、世界を癒しの力で包み込みたい看護師タレントユウジです。
このブログでは、病棟、高齢者介護施設、新型コロナウィルス軽症者宿泊施設、訪問看護ステーション、大学院生、教員、派遣など、様々な場所で看護を考えてきた看護師歴10年の僕だからこそいえる内容をブログ記事にして発信しています。
今回のテーマは、SBARを用いた看護記録・報告書の書き方【読み手にとってわかりやすい】です。
先日こんなツイートをしました。
新人看護師や復職看護師で、
・申し送り
・報告
・インシデントレポート記載
・看護記録の書き方
について、困難感がありませんか?
僕は新人看護師の頃、口頭・書面とも、苦手だった。
でも、事実と解釈が重要な看護の現場では、明らかに正しい説明の仕方がある。
それがSBAR。— 看護師タレントユウジ(テアトルアカデミー大阪) (@nursetalentyuji) December 13, 2020
医療・看護の現場では、24時間の患者の生活が成り立つように、看護師が介入していく必要があります。そのため、看護師は1人では看護が成り立たず、交代で患者を看ていくことになります。そのときに必要なことが、申し送りであったり報告です。しかし、これが難しい。
悩みの理解
看護記録の記載や、申し送りとか報告、それから報告書の記入って、困難感を感じていませんか?
僕もそうでした。新人看護師の頃は、申し送りは緊張するし、記録はツッコまれるし、単刀直入に嫌でした。
そもそも学生の頃から報告や記録を書くことにツッコまれるし、トラウマもありました。
でも、報告のしかたや看護記録の書き方は、ちゃんとした正解があります。
それのヒントになるのが、SBAR(エスバー)です。
これは、5W1Hに近いです。そもそも、5W1Hで記録を書きましょうと教えてくれる看護学校や病院は、かなり少ないと思います。
今回はこのSBARを用いた看護記録の書き方について、深堀して説明をしていきたいと思います。
転倒や誤薬などのイベントが起きたときの看護記録で何を書いたらいいかわからない人、書く時間を減らしたい人は必見です。
今回の目次は、こんな感じです
- SBARとは:看護記録や報告書の書き方でスマートなツール
①SBARを知ろう!看護記録や報告書をなぜ書けないか?
②SBARは、看護記録や報告書の書き方でスマートなツール - 【SBARを使った看護記録の書き方】
①【SBARを使った看護記録の書き方】の前に、読み手を意識する
②【SBARを使った看護記録の書き方のコツ】Bを省略できる - 【SBARを使った看護記録の書き方】事例で説明します
①【SBARを使った看護記録の書き方】患者紹介
②【SBARを使った看護記録の書き方】時系列で事実を書こう
③【SBARを使った看護記録の書き方】SBARはどれか? - まとめ
それでは、説明していきます。
SBARとは:看護記録や報告書の書き方でスマートなツール
SBAR(エスバー)は、アメリカ発祥の報告様式で、医師に緊急の報告をするときに便利な報告様式ですが、看護記録や報告書の書き方でもスマートに使えます。スマート、つまり、無駄がなく、必要なことだけに特化したツールです。
SBARとは
- S(Situation):患者を取り巻く状況や患者の状態
- B(Background):患者背景(病名、入院目的、基礎疾患、治療、経過など)
- A(Assessment):評価、解釈、判断
- R(Recommendation※):依頼内容、※リクエスト(Request)としてもOK
これに合った情報、解釈、依頼内容であればOKです。
SBARを知ろう!看護記録や報告書をなぜ書けないか?
看護学生時代から、レポートや報告自体が苦手な人が多いです。僕もそうでした。報告内容は口頭でも文章でも、抽象的で、感想みたいな内容が多かったです。この答えはたくさんあると思いますが、1つの正解は、「読んでもらうことへの意識」です。
看護学生の記録は学び主体なので書いた本人のためになる内容です。その一方で、看護記録やインシデントレポートは、呼んだ人に情報、詳細、内容などが伝わることが目的です。
この学生の記録と看護の職場の看護記録の違いについてを、看護学生→看護師として働くという変化の段階で、誰も教えてくれないし、本人が意識することもできない。さらに、看護学生時代での看護記録の書き方を、5W1Hで書こうとさえも、なかなか教えてくれる学校は少ないし、文章をだれに見てもらうものなのか、誰も教えないから学生自身もわからない、わからないまま卒業する、ということです。
簡単に言うと、初めて人のために文章を書くから、看護記録や報告書をうまく書けないということです。
これは、新人看護師だけではなく、3~5年目看護師でもありえます。書いた文章を見ると、その人の考えていることがわかるものです。
この文章を書けない→書けるにするヒントをくれるツールがSBAR(エスバー)です。
SBARは、看護記録や報告書の書き方でスマートなツール
SBARは、文字通りS・B・A・Rの4つの基本構成であり、無駄をなくしたスマートなツールです。さらに、Sが一番最初に来ている、つまり患者の状況・状態を、一番最初に記載したり述べたりすることになるので、SBARを用いると最初に一番大事なことを述べることになります。
次に、R(Recommendation、Request)が大事です。口頭であれば、報告相手に何を依頼するか、ということが大事です。報告書や看護記録の記載では、そのとき誰に何を依頼したか、ということです。これは、アサーティブコミュニケーションのときにも述べましたが、責任を持って○○するという内容です。依頼をしたが相手が行動してくれなかった、依頼をしてなくて相手は行動しなかった、全然違います。
S・B・Aだけでは、相手に何をしてもらいたいかは、具体的ではありません。(ここがアメリカっぽいところです)ニュアンスで伝わりますが、はっきりと依頼を伝えるのが大事です。日本人はニュアンス、空気、忖度など言語化しないことを美徳とする国民性ですが、それが原因で、S・B・Aだけで依頼内容は伝わる人と伝わらない人がいます。なので、はっきりと依頼内容を伝えるのが大事です。
A(Assessment)は、依頼内容の根拠になります。直感的に「ヤバそう」「マズそう」も解釈ですが、「ヤバそうだから○○してくれませんか」では伝わらないことが多いでしょう。でも直感は大事です。なんでそう思うか・思ったかを少し深堀しましょう。
B(Background)は、患者の基礎情報です。これは、S・A・Rの内容とは比較にならない量の情報があり、内容によって報告の優先順位が変わるので取り扱いはちょっと厄介です。ただ、それでも過去情報なので、S・Rよりは優先順位は高くならないので、要約が大事です。マズローなどを活用して生命や生活に影響する内容をピックアップするのがよいです。
SBARを使った看護記録の書き方
看護記録は、受け持った患者の数×3~4回、勤務時は毎日書いてますよね。なので、少し改善をしていけば大丈夫です。ただ、転倒や誤薬などのインシデントレベルのイベントが起こると、いつもの看護記録よりは、ボリュームが増すことは想像できると思います。
【SBARを使った看護記録の書き方】の前に、読み手を意識する
まずは、誰に読んでもらうか?の確認をしましょう。看護記録は、まずは病棟看護師が、情報収集のために読みます。また、リハビリテーション関連職種も、看護記録を読んで情報収集します。基本的にはこれらの職種が読み手で良いのですが、カルテの開示があったときのために、患者・家族の方が見ても、違和感のない記録内容である必要があります。簡単に言うと、失礼な記載はしないことです。
【SBARを使った看護記録の書き方のコツ】Bを省略できる
この場合は、B(Background)は省略してOKです。B(Background)については、記録の別の部分にたくさん記載されているので、再度書く必要はありません。
たとえば、患者さんが転倒をした場合、
- S:転倒時の患者の状態と転倒時の周囲の状況
- A:転倒の結果予測できる合併症(骨折など)や転倒の原因(筋力低下、看護師の指示が通じるか、眠剤を内服していた、など)
- R:転倒時の他看護師への依頼や医師への診察依頼
などのS・A・Rは記載の必要があります。しかし、B(Background)の、急性膵炎で入院中だった、降圧剤を飲んでいた、などは転倒に関連性が薄いですし、省略してOKです。夜間の転倒で、眠剤を内服していた場合は、Aに追記します。あくまでB(Background)は変わらない基礎情報なので、それは別の部分で情報収集してね、というスタンスで省きます。
【SBARを使った看護記録の書き方】事例で説明します
それでは、実際に患者事例を用いて、SBARを使った看護記録の書き方を紹介します。
【SBARを使った看護記録の書き方】患者紹介
70歳代の女性患者Aさん。大腿骨頸部骨折で、観血的整復固定術の手術後で7日後経過し、入院中。既往歴に高血圧と不眠症あり、降圧剤と眠剤内服中。車椅子移乗見守りの状況で、ナースコールを押して日中夜ともにトイレに行っていた。
夜2時に、ドスンという音がしたので訪室すると、床に尻もちをついており、転倒した様子。「すみません、トイレに行きたくて」「転びました」と言う。私がナースコールを押してB看護師とともに車いすに乗せる。血圧測定し、著変なし。下肢の痛みの訴えが強くなかったので、看護師2人介助でトイレに行き、排尿あり。ベッドに戻り、当直C医師に連絡し、診察依頼する。医師の診察で、頭部外傷も骨折もなさそうだが、朝に念のためレントゲンの指示あり。Aさんには安全のためにベッド柵をさせてもらうよう説明し、さらにトイレに行くときはナースコールを押してもらうよう説明する、了承を得る。
【SBARを使った看護記録の書き方】時系列で事実を書こう
看護記録の書き方を紹介します。S)は患者の発言などの主観的な情報、O)は患者の客観的な情報です。
S)「すみません、トイレに行きたくて」
O)ドスンとした物音で訪室。床に座り込んでいる。転倒したか聞くと、「そうです」と答える。B看護師を呼び、2人介助で車いす移乗し、下肢疼痛なし。血圧測定し、著変なし。看護師2人介助でトイレに行き、排尿あり。大腿部に腫脹・発赤なし。ベッドに2人介助で移乗し、当直C医師に診察依頼する。診察結果は、頭部外傷なし、骨折なし。朝にレントゲンの指示あり。
S)はい、呼びます。わかりました。
O)トイレに行く際は、臥床したままナースコールを押してもらうこととし、ベッド柵をさせてもらうことを了承得る。
こんな感じです。時系列で書きます。
【SBARを使った看護記録の書き方】SBARはどれか?
この看護記録をSBARで分けると、
S:S)「すみません、トイレに行きたくて」O)ドスンとした物音で訪室。床に座り込んでいる。転倒したか聞くと、「そうです」と答える。これらのイベントの経緯がS(Situation)
B:なし
A:転倒したかを聞いたことと、2人介助をやろうと考えたこと、臥床したままナースコールを押してもらうこととし、ベッド柵をさせてもらうこと
R:B看護師を呼び、2人介助で移乗実施と、当直C医師に診察依頼をしたこと
こんな感じです。Bはありません。
眠剤でぼんやりしたまま、ナースコールを押し忘れたのだろうな、と推測ができますが、ここでは事実と具体策のみを先に記載します。そして、カンファレンスなどで対応策をしっかり決めようという段階(があれば)で推測をしっかり書いていきます。
まとめ
SBARに限らず、看護の現場では自分の意見を伝えることと、きちんと依頼をすることが大事です。
看護記録は、看護師や他職種に情報を伝えていくということと、カルテの開示請求がありえることを見越して、記載をしていくことが大事です。
これが前提で、記録を書く前の段階で、SBARを使ってぜひ整理してみてください。きっと進歩があります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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